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組織間リリースを用いたプロ野球投手のコンディショニング。

2020-03-09

  組織間リリースを用いたアスリートのコンディショニングの実例を紹介します。組織間リリースは拘縮治療、疼痛治療だけでなく、繰り返しのスポーツ動作での負荷の分散、可動域改善、動作の安定性(再現性)、そしてトータルでパフォーマンス向上に必要なすべての組織の癒着を解消させます。1年に一度は、全身コンディショニングを行うと、思い通りの動きを保つことができます。
  
 キャンプでのハードワークで腰のハリが強くなってきたという主訴でした。対症療法(1)でとりあえずの痛みを解消させますが、下肢から上肢にかけての運動連鎖を妨げる要因が多数あるので、運動連鎖全体の制限因子をすべて解決するようにしました(2-6)。ちなみに実施時間は1時間でした。これからシーズンインに向けて調子を上げてくれることでしょう。
   
 
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1)左背筋の痛みに対して
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・腰部で多裂筋と最長筋の間の癒着を割って入るようにリリース
・下部胸郭において、最長筋と腸肋筋の間の癒着をリリース
以上により、背筋の痛みが改善し、前屈の柔軟性が改善しました。
   
 
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2)背部全体の緊張、肩可動域に対して
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 肩から上背部にかけての滑走不全は、フォロースルー時に腰部へのストレスを増大させる一因となります。肩甲上腕関節、肩甲骨、上背部(胸郭)の可動性を改善するために以下を実施。
 
・僧帽筋下部線維を、その深部の棘下筋、腸肋筋、広背筋などからリリース。特に広背筋との間のリリースによって肩甲骨の運動が改善
・肩甲骨外側で、広背筋と前鋸筋のリリース、広背筋と大円筋のリリースをおこない、肩甲骨の上方回旋を改善
・外転可動域、内旋可動域を改善するため、腋窩神経と三角筋、上腕三頭筋外側頭、長頭、関節包(腋窩陥凹)とのリリース
  
 
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3)左殿部の癒着
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 本人も自覚しているように、左股関節の屈曲・内旋制限がありました。特に坐骨神経が前額面、矢状面で遠回りしているのを改善することで、十分な可動域を獲得しました。
 
・坐骨神経と上双子筋、内閉鎖筋、下双子筋、大腿方形筋の癒着のリリース
・坐骨神経が内閉鎖筋レベルで外方に偏位していたので、大転子滑液包や大腿方形筋に対して内側に向けて移動させるようにリリース(前額面での近道)
・大腿方形筋の深部に癒着があり、下方に偏位していたため、股関節屈曲時に坐骨神経が遠位に遠回りしていました。大腿方形筋を上方に向けてリリースし、近道させました。
・大腿後面で、大内転筋と半膜様筋や坐骨神経の癒着をリリース。 
   
 
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4)大腿外側の痛み
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 フォロースルーで左脚での一脚支持において腸脛靭帯の遠位部の痛みを感じるとのこと。裂隙から近位10cmの腸脛靭帯後縁に癒着による痛みがありました。またその前方で、外側広筋深層で、大腿神経外側広筋枝の癒着がありました。

・腸脛靭帯と外側広筋のリリース(前縁、後縁)
・外側広筋の深層で、大腿神経外側広筋枝をリリース
   
   
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5)左脇腹・左鼡径部
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 フォームを少し変えて、体感回旋を強く使うようにしているとのことで、左腸骨稜に沿って痛みがありました。外腹斜筋と内腹斜筋の間、そして腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経にそって痛みがありました。

・腸骨稜に沿って腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経のリリース。
・鼠径靱帯の下で、腸骨鼠径神経のリリース
  
 
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6)ワインドアップの右片足立ちの安定性に対して
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 右片足立ちが安定しないとのことで、触診したところ、股関節おw少し内旋すると小殿筋が前方に異常に膨隆していました。
 
・大腿筋膜張筋、中殿筋・滑液包・小殿筋、関節包、頸部の脂肪体などをリリースし、股関節内旋位での鼡径部外側の筋の不自然な膨隆を解消
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