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リアラインレポート1:膀胱・尿道・骨盤底筋の癒着に着目した新しい尿漏れ治療法

2020-06-18

今月から月に1、2回のペースでリアラインレポートをブログに掲載することにしました。
皆さまが日々の中で活用できる情報を中心にアップしていく予定です。
是非、ご一読いただき今後にお役立ていただければと思います。

【膀胱・尿道・骨盤底筋の癒着に着目した新しい尿漏れ治療法】
 蒲田和芳, PhD, PT  株式会社GLAB 代表取締役


当社では、皆様の悩みや不安を解決するための新しい運動器具「ペリネライザー」を開発しております。今まで開発してきたデバイスは、アスリートの方から日常的にスポーツをしていない方にも使用できる商品でした。
ここ数年、私自身は骨盤を中心とし「産前・産後ケア」という領域の治療も数多く行ってきており、多くの関連するセミナーやイベントなどで講演をさせていただいております。

今回、産前・産後の多数の女性が抱える悩みの中から「尿失禁」に注目し、骨盤底筋群の活性化を促す運動器具を開発しました。まだ公には販売しておらず、研究段階な部分もございますが、癒着に着目した尿漏れ治療の基本的な考え方、そして効果的に骨盤底筋トレーニングを行うために用いる運動器具「ペリネライザー」を紹介させていただこうと思います。

■ 尿失禁のメカニズム(仮説)
尿失禁は、多くの場合、加齢や出産により骨盤底筋や尿道周囲の支持機構の機能低下や尿道そのものの機能の破綻により起こる、と書かれています。これに対して、治療の方法として「骨盤底筋のトレーニング」が推奨されており、調べるとたくさんの論文が出てきます。しかし、骨盤底筋の機能低下に対して、トレーニングを行うだけでは尿漏れが解消されない例が多く、尿漏れ解消を目指す上で不十分であることは明白です。

私は尿失禁を癒着の観点からみて以下のように考えています。
1) 膀胱の問題: 膀胱とその周囲の癒着による過剰な排尿反射
2) 尿道の問題: 尿道周囲の癒着と尿道括約筋の機能不全
3) 骨盤底筋の問題: 骨盤底筋の癒着と機能不全

以下、少し詳しく説明しましょう。
1)膀胱の問題
妊娠中には子宮の拡張に伴い、膀胱は子宮と腹横筋・恥骨などに挟まれて圧迫された状態になります。これにより、膀胱が腹横筋、子宮及び膣外壁、外腸骨静脈などと癒着すると考えられます。膀胱周囲の精密触診を行うと、上記のような癒着があると、膀胱周囲の癒着の部分に指を触れると尿意を誘発することができます。つまり、膀胱の平滑筋を伸張するような刺激を加えて、意図的に尿意を発生させることができるのです。

さらに、以下のようなメカニズムが関係していると推測されます。
 妊娠中に生じた膀胱と子宮の癒着の結果、出産後の子宮の収縮にともなって膀胱を後下方に引き込み、膀胱を後屈させ、膀胱の容積を縮小する。重度の場合は膀胱瘤となる。この膀胱の位置変化は尿道を曲げてたわませる可能性があり、尿道括約筋の機能にも影響を与える。
 膀胱と腹横筋の癒着があると、咳などの速い腹横筋の収縮によって膀胱が揺らされ、癒着した膀胱平滑筋を刺激して、排尿反射を誘発する可能性がある。これにより、咳やくしゃみ、ジャンプなどで腹横筋が速い収縮を起こすときに「腹圧性尿失禁」が起こりやすくなる。
 膀胱と外腸骨静脈の癒着は、座位から立位になったときなど股関節伸展において膀胱を下方に引き下げ、膀胱容積を縮小し、尿道をたわませる可能性がある。これにより、トイレに向かって歩いているときに急激な尿意が発生する「切迫性尿失禁」を引き起こしやすくなる。
 切迫性尿失禁の方において、膀胱と子宮との間の癒着部分を触診すると尿意が発生します。そのポイントに速い動きが伝達されると排尿反射が誘発されると考えられる。

2)尿道の問題 
膀胱と子宮との間をリリースすると、尿道と膣の間の癒着にも触れることができます。そして、癒着があると、尿道を圧迫した状態で随意筋である外尿道括約筋を収縮させるように指示しても、強い収縮が起こりません。尿道と周囲組織との癒着により、外尿道括約筋の機能低下が生じるのだと考えられます。特に恥骨や子宮・膣壁、側面では脂肪組織や閉鎖神経と癒着している例に遭遇することがあります。これにより尿道括約筋は正常に尿道を締めることができなくなってしまいます。

3)骨盤底筋の問題
骨盤底筋には、第1層の最深部にある会陰膜と第2層の恥骨尾骨筋との間の癒着、また腸骨尾骨筋と股関節外旋筋である内閉鎖筋との癒着が生じます。経腟分娩では、会陰切開やテント障害を含む骨盤底筋の損傷により、上記の癒着が重症化している例もあります。さらに、骨盤底筋の支配神経である陰部神経とその枝である下直腸神経、会陰神経、陰核背神経は骨盤底筋への持続的な圧迫によって骨盤底筋と癒着を起こしやすく、これが筋の可動性を著しく制限を起こしていることもあります。すなわち、骨盤底筋の癒着によって、骨盤底筋自体が身動きの取れない状況にあり、トレーニング効果が得られにくい状況になっているのです。

■ 治療の流れ
上記のメカニズムを考慮して治療の流れとしては以下のように進めます。
1) 癒着の治療
上で述べたように、膀胱周囲、尿道周囲、骨盤底筋にはそれぞれ自然回復の可能性の小さい癒着が存在しています。これらをリリースすることにより、異常な感覚入力や収縮機能の改善を得ることができ、それぞれにおける本来の機能を再獲得させていきます。
 膀胱と周囲の癒着を解消し、排尿反射を誘発する膀胱壁への緊張伝達を解消させる。
 尿道括約筋の収縮を阻害する要因の解消により、排尿中の随意的な「排尿のストップ」ができるようにする。
 骨盤底筋の随意的・不随意的な機能の改善

2) スタビライズ
骨盤底筋(恥骨尾骨筋、腸骨尾骨筋)や尿道膣括約筋の機能改善を目的として、トレーニングを行います。コツを掴みにくい場合は、骨盤底筋に対しては強制呼気、外尿道括約筋に対しては指でのフィードバックを加える方法もしくは「排尿ストップ」トレーニングを繰り返す、などの方法を用います。

3) コーディネート
くしゃみ、咳、ジャンプなどの振動に対抗するため、タイミングを合わせて骨盤底筋群や外尿道括約筋に力を入れる練習を行います。特に、外尿道括約筋の活動のタイミングを最適化することは、尿漏れを防ぐための決め手になります。なお、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁ともに上記の様に治療を進めることで機能の改善が見込めます。

■ ペリネライザーとは?
 私が新しく開発した「ペリネライザー」というデバイスは、骨盤底筋の一部を圧迫しつつ、骨盤底筋のトレーニングを行うための器具です(図1)。上記で述べた通り、骨盤底筋の中で癒着が生じやすい場所は、腸骨尾骨筋とその下方にある会陰膜、その外側にある内閉鎖筋との間です。この部分で癒着が生じると、腸骨尾骨筋が下外側に引き寄せられた状態になります。この状態で骨盤底筋のトレーニングを行っても筋が滑らない為、短縮することが出来ません。

「ペリネライザー」の2つの突起部分を使用して癒着を剥がします。突起が肛門のやや前に位置するように座ります(図2)。具体的には、腸骨尾骨筋を上方へ圧迫し、内閉鎖筋や会陰膜から引きはがします。また繰り返し、股関節内外旋(内閉鎖筋の収縮と弛緩)、骨盤底筋の随意収縮(腸骨尾骨筋)を行う事により、会陰膜・腸骨尾骨筋・内閉鎖筋の3つの組織間に滑走が生まれ、徐々に癒着を剥がしつつ、それぞれの独立した「滑走性」を得ることが出来ます。
 
■ 今後の展望
 ペリネライザーは尿もれのメカニズムをすべて解決できるわけではありません。しかし、骨盤底筋の癒着という重要な要素を解決することができます。これだけで尿漏れが完治する人が多いこともわかってきました。
今後、この「ペリネライザー」を使用してまずは尿失禁データを収集し、研究を行いたいと考えています。先にも述べた通り、現状では公に販売しておりません。
この記事を読んで、興味を持たれた方がみえましたら、是非ご連絡下さい。

■ 産前・産後に特化したセミナー情報
 産前・産後の治療に特化したセミナーも開催しております。
・<産前・産後>リアライン(RPC)
・<産前・産後>組織間リリース(P-ISR)

●RPC
RPCでは主に産前・産後に起こる問題に関する概論や治療に関する知識を中心に講習をしています。治療技術の前に、まずは知識を取り入れたい方にオススメです。
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第3回 胸郭(腹部・肋骨・腕神経叢):6月27日(土)9:30~
Zoomを使用したオンラインにて開催します
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●P-ISR
P-ISRは組織間リリースの技術を用いて治療を中心に講習をしています。
知識よりも実技を極めたい方にオススメです。
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第5回 胸郭2 :7月18日(土)9:30~
Zoomを使用したオンラインにて開催します
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お申込みは  こちら
セミナーに関してのお問い合わせは  seminar@realine.info 宛までご連絡下さい。


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