足部のアーチは、26個の骨の形状とともに、筋や靭帯によって支えられています。しかし足関節や足部のアライメントの異常により、アーチに不安定性をもたらし、さらにはアーチの降下とその機能の破綻を招きます。
アーチ機能の破綻は足部にストレスの集中をもたらし、その結果として足底腱膜炎、疲労骨折、外反母趾といった足部疾患へと進行します。
例えば外反母趾は、第1MP関節の外反に随伴して、第1中足骨の内転・回外が生じます。さらにその背景には、外側アーチ降下と楔状骨の外方偏移が見られます。したがって、その治療には足部全体のマルアライメントの修正が不可欠です。
足部のマルアライメントにはいろいろなタイプがありますが、今回は外側アーチの降下を伴うハイアーチへの対策を説明します。(※ハイアーチとなる前提として、ショパール関節の外転不安定性がないことが必須となります。ショパール関節外転不安定性があると、荷重によって確実に扁平足になるためです。)
外側アーチの降下を伴うハイアーチの足は、荷重がかかった際に外側アーチが降下すると、中足部が回外して、内側アーチは上昇、または変化しない状態となります。外側アーチの降下、すなわち立方骨の降下は、その内側に隣接する楔状骨を外方に引き込みます。それにより中足骨底が外方に引かれ、中足骨が内側ほど内転・回外します。
このようなアライメントは、実はとても多くの人に見られる共通の問題です。
最終的に中足骨内転・回外変形が大きいほど、母趾の中足指節間関節(MP関節)にストレスを及ぼし、外反母趾が進行すると考えられます。
上で挙げたようなマルアライメントに対して、その修正を行わない治療法の選択は考えられません。対症療法では、同様のプロセスによって症状の増減を繰り返すことは明白だからです。
リアライン・コンセプトでは、①リアライン(このマルアライメントの修正)を行い、最大限ストレスの集中を防ぐことを最優先とします。その後、②スタビライズ(筋力の強化)、③コーディネート(マルアライメントを招く動作パターンの修正)へと進めていきます。
STEP1
re-align
1.中足骨の平行化
2.横アーチ形成(第4列挙上)
3.踵立方関節安定化
STEP2
stabilize
STEP3
coordinate
まず、足部以外からの影響として後足部回外を修正します。それには足関節内側の拘縮とともに、膝関節における脛骨外旋拘縮、または股関節外旋拘縮の治療が必要となります。この治療により、荷重時に後足部回外を招く外力を消失させる必要があります。
次に、上記の「STEP.1リアライン」の要素を考慮して足部リアラインを進めます。最初に降下している立方骨を挙上させるため、立方骨の上方への可動性を低下させている癒着に対して組織間リリースを行い、外側アーチの形成に必要な可動性を獲得させます。その上で、足底の筋への圧迫を回避しつつ立方骨を支持するアーチパッド(インソール)を用いて、立方骨の降下を防ぎます。
立方骨の挙上は楔状骨を内側に押して、中足骨を回内させ、その結果として中足骨底を内方に移動させます。その結果、内側ほど内転していた中足骨が平行に近づき、そのことによって横アーチの形成が進みます。
第1中足骨底が内方に移動すると、足趾の背屈において爪が第1中足骨底に向かって動くようになり、第1MP関節の運動が正常に戻ります。背屈可動域が正常化し、最大背屈時の痛みが消失したらリアライン層が終了したとみなし、スタビライズに進みます。
触診にて、炎症症状を第1MP関節、母趾外転筋に認めた。同部位に歩行時痛、第1趾背屈時痛があった。第1趾中足骨内転、中足部回外、立方骨降下、踵骨回外、下腿外旋のアライメントを呈しており、母指外転筋、短趾屈筋間の癒着、立方骨下の脂肪体の癒着をこれらの原因因子ととらえた。
マルアライメントによる応力集中の結果、第1趾MP関節、母趾外転筋の疼痛につながったと考えられる。結果因子として第1趾内転に伴う、第2-5趾の外方偏位、外側荷重、腓骨筋機能低下も認めていた。
1.足部以外のマルアライメント修正
2.足部のマルアライメントの修正
3.第1MP関節周辺の癒着のリリース
今回の症例では、母趾外転筋周囲の滑走性の改善と、足部アーチの改善により非荷重位・荷重時痛の消失が得られた。
足部疾患の一つである外反母趾は、リアライン・コンセプトに基づく治療により症状改善が可能です。
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