~原因因子・結果因子の分類~
リアライン・コンセプトは、関節マルアライメント(いわゆる“ゆがみ”や“ずれ”)を治し、関節が本来持つ運動機能を速やかに回復させるための方法です。
このコラムでは実際の症例を通して、リアライン・コンセプトの一つ、患者さんの中に起こっている現象を「原因因子」と、「結果因子」に大別する方法をお伝えします。
関節マルアライメントは、放置すると機能回復が遅れ、リハビリテーションのスムーズな進行が不可能となってしまいます。
さらに長期的には、変形性関節症のような不可逆的な病変への進行も懸念されます。そのため、リハビリテーションの過程において、関節マルアライメントは早期の矯正が必要となるのです。
もちろん、各患者の病状により、考慮すべきリスクや治療スケジュール上の制約がありますが、病状によって治療上目指すべき理想の運動が変わる訳ではありません。
また、関節マルアライメントの評価においては、理想の運動と目の前の関節に起こっている異常運動の誤差を見極めることも必要です。
関節マルアライメントの把握は評価のゴールではなく、異常運動を把握するための最初のステップと考えます。そして病態が異なり、背景・過程が違うとしても、理想の関節運動は1つであり、治療のゴールは共通なのです。
リアライン・コンセプトの大きな特徴の一つは、患者さんに起こっている現象を「原因因子」と「結果因子」に大別することです。例えば、痛みのある患者さんに対し、『痛みを生じさせている原因』と、『痛み・機能障害の結果として生じている現象や痛み』をしっかり分けて考えることです。
原因因子には、次の要素が挙げられます。
このうち解剖学的因子や不安定性を保存療法で変化させることは難しく、装具に頼ることになるかもしれません。しかし、滑走不全、筋機能不全、マルユースは運動療法(リアライン・エクササイズ)や徒手療法(マニュアル・リアライン)によってをもって変えることができます。
また、結果因子には次の要素が挙げられます。
結果因子の治療のことを「対症療法」といいます。症状に対して直接的な治療を施すことで、痛みなどの軽減を図ります。しかし、上に述べたマルアライメントとその原因因子を解決しなければ、同じメカニズムで同様の症状を再発する可能性が高くなります。
リアライン・コンセプトに基づいた治療の症例をご紹介します。
疼痛動作
体幹後屈
疼痛部位
仙腸関節
アライメント評価
後屈時に上前腸骨棘が内側に移動=寛骨の内旋
※寛骨内旋は、後方において仙腸関節の離解をもたらすので、仙腸関節痛の重大な要因の1つ。
寛骨内旋筋の滑走不全により、体幹後屈時に寛骨内旋増強が起こり仙腸関節痛が引き起こされる。
縫工筋の組織間リリース
痛みの消失、後屈可動域の大幅な増大
現代人に多い腰痛についても、原因と結果を分けて考えることで、適切なアプローチの選択につながり、リアライン・コンセプトにて症状、動作の改善が可能となる。
主訴
前方の移植骨と上腕骨頭がぶつかり水平内転制限が起こっていると感じられる
可動域
水平内転、挙上、内外旋制限(外転・外旋制限はBristow法がそもそも外転外旋を止める手術であるので、治療対象外とする)
肩後方タイトネスによる、水平内転制限、骨頭の運動制限
外転・外旋以外の可動域の左右差が消失した
拘縮肩に対しても、組織間リリース(ISR®)を用いて、組織間の癒着を痛みなくリリースすることが可能である。また、その結果、痛みの消失、可動域の改善が可能となる。
主訴
痛みと荷重位のバランスの不良により、まともに左足に荷重できない状態が続いている
疼痛部位
第1・第2中足骨間、長趾伸筋腱(第2趾)、内側楔状骨の底側
アライメント
前足部回外、立方骨降下、第5中足骨底の下内方への変位と拘縮
可動域
前足部回内制限
疼痛部位の組織間リリース
立方骨、第5中足骨底、短趾屈筋との間にある癒着(緊張伝達)の組織間リリース(治療時間約10分)
前足部回内の可動性が改善し、片脚立位での安定性が向上した
長期間の滑走不全、異常(代償)運動によって、続く症状や機能障害も、リアライン・コンセプトによって、原因因子と結果因子を正しく特定し、丁寧なアプローチをすることで改善可能である。
関節の位置・運動を修正し、正しい機能を復活させるリアライン・コンセプト。リアライン・コンセプトは、知識と技術の両方をもって実現します。 このリアライン・コンセプトを学べるのはクリニカルスポーツ理学療法(CSPT)です。
クリニカルスポーツ理学療法(CSPT)の目的は、以下の3つです。
クリニカルスポーツ理学療法(CSPT)では計10回にわたる十分な講義・実技時間を設けており、臨床により近づいた内容で、現場にすぐに生かすことができます。