その膝内側の痛みの原因は?
~膝の捻れを修正する治療法~
「膝の内側が痛む」
変形性膝関節症(膝OA)を発症した場合、ほとんどの患者さんが訴える症状です。
では、なぜ膝の内側が痛むのでしょうか。
膝関節は、結合組織が重なり合い密集しています。そのため、互いの組織の滑りが悪くなる「滑走不全」が起こると、組織間で互いにストレスを与えやすい状態になります。
まずはどの組織が痛みを発しているのか特定し、痛みが生じるメカニズムを推察しなければなりません。
痛みを発している組織を特定するには、何よりも精密な触診が重要になります。
「膝関節」は、大きく膝蓋大腿関節(PF関節)と脛骨大腿関節(FT関節)の二つから構成されます。
ここでは、膝関節に深く関わる組織の形状や仕組みをご紹介します。
膝蓋骨の関節面は滑膜と連絡し、膝蓋下脂肪体は滑膜と線維膜との間に存在します。内側膝蓋大腿靱帯・半月膝蓋靱帯が内側支帯深層に位置し、膝蓋骨外側への動きを制動します。
そして、脛骨大腿関節(FT関節)と膝蓋大腿関節(PF関節)の連動として、膝関節内・外旋と膝蓋骨の運動の理解は必須です。
脛骨外旋時に膝蓋骨は外方移動・内方傾斜し、脛骨内旋時に膝蓋骨は内方移動・外方傾斜します。
脛骨大腿関節(FT関節)の異常なキネマティクスとして、以下の状態がしばしば見られます。
このような膝の異常な回旋動態を「下腿外旋症候群」と名付けました。
下腿が外旋位であることによって、膝関節の疾患や機能異常につながり、それは膝疾患の治療を難しくします。
さらに、異常な回旋アライメントでの運動を反復することは膝内側へのストレスを増大させ、痛みや機能低下を引き起こす原因となります。
膝関節における「リアライン・コンセプト」の方針を下の図の通りとしています。変形性膝関節症(膝OA)のキネマティクス研究の結果をみると、これは典型的な下腿外旋症候群といえます。
変形性膝関節症(膝OA)のリアライメントとして、まずは下腿外旋拘縮を解消させて膝屈曲に伴う十分な下腿内旋運動を回復させることが必要となります。その結果、外方に偏位した脛骨を正常な位置に近づけることが可能となります。
変形性膝関節症(膝OA)であってもキネマティクスが正常化してくると、徐々に関節としての運動機能が改善されてきます。
他動伸展の痛みが消失したら、①リアライン(伸展制限の解消)、②スタビライズ(膝伸展筋力の回復)、③コーディネート(正常歩行の獲得)を進めていきます。
STEP1
re-align
STEP2
stabilize
STEP3
coordinate
1回の治療によって、アライメント(膝内反)の改善、可動域の改善が得られた。
その後、3回に渡る治療により歩行時の痛みが消失した。
伸展・屈曲可動域制限、OKC膝伸展にて、最終域での下腿外旋が著名にみられるマルアライメントとした。
下腿内旋の可動性、内旋位での安定性の改善により、内側へのストレス軽減、症状の消失を図る。
大腿外側のリリースにより、外旋アライメントを修正しつつ、展可動域の向上を図った。脛骨の後方への可動性が不十分であったため、膝窩部の脛骨後方、すなわち膝内側のハムストリングス―腓腹筋間のリリースを丁寧に行い、下腿内旋エクササイズにて、内旋可動域の向上に努めた。
今回の症例は、階段の下り動作、しゃがみ込み動作で膝内側の痛みを生じる活動量の多い症例でした。膝蓋大腿関節(PF関節)と脛骨大腿関節(FT関節)の両方に問題を抱えていましたが、関節可動域(ROM)の改善、下腿外旋アライメントの改善により、スポーツ復帰が徐々に可能となりました。
膝の正常な回旋アライメントを取り戻すためには、運動療法だけでは難しく、組織間リリース(ISR)の技術が求められます。
クリニカルスポーツ理学療法(CSPT)の「膝関節編」は、膝関節の回旋アライメント評価とともに、それを確実に改善するための治療を習得できる内容となっております。
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