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その膝内側の痛みの原因は?

~膝の捻れを修正する治療法~

痛みを発する組織の特定が重要な「変形性膝関節症」

膝関節(膝の内側部)の痛み

「膝の内側が痛む」
変形性膝関節症(膝OA)を発症した場合、ほとんどの患者さんが訴える症状です。
では、なぜ膝の内側が痛むのでしょうか。

膝関節は、結合組織が重なり合い密集しています。そのため、互いの組織の滑りが悪くなる「滑走不全」が起こると、組織間で互いにストレスを与えやすい状態になります。

まずはどの組織が痛みを発しているのか特定し、痛みが生じるメカニズムを推察しなければなりません。
痛みを発している組織を特定するには、何よりも精密な触診が重要になります。

二つの関節で構成される膝関節の仕組み

「膝関節」は、大きく膝蓋大腿関節(PF関節)脛骨大腿関節(FT関節)の二つから構成されます。
ここでは、膝関節に深く関わる組織の形状や仕組みをご紹介します。

正面から見た膝関節

大腿骨の膝蓋に面した外側隆起は、内側隆起と比較すると高く、幅広で、突出しています。
また、膝蓋骨が通る溝である顆間溝軸は、大腿骨骨幹部軸に対し外方へ約10°傾斜しています。顆間窩は、内側顆・外側顆を分けるとともに、膝前十字靱帯と後十字靱帯の通路を形成します。

脛骨大腿関節(FT関節)における膝伸展に伴う脛骨外旋運動はスクリューホーム運動(screw home movement)と呼ばれ、生理学的な回旋運動とされています。 スクリューホーム運動によってロックされた膝完全伸展位からの初期屈曲時には、下腿を内旋させることによって終末伸展が解除されます。これには膝窩筋の作用が重要とされています。

膝関節の内旋・外旋と膝蓋骨の運動

膝蓋骨の関節面は滑膜と連絡し、膝蓋下脂肪体は滑膜と線維膜との間に存在します。内側膝蓋大腿靱帯・半月膝蓋靱帯が内側支帯深層に位置し、膝蓋骨外側への動きを制動します。
そして、脛骨大腿関節(FT関節)と膝蓋大腿関節(PF関節)の連動として、膝関節内・外旋と膝蓋骨の運動の理解は必須です。
脛骨外旋時に膝蓋骨は外方移動・内方傾斜し、脛骨内旋時に膝蓋骨は内方移動・外方傾斜します。

脛骨大腿関節(FT関節)の異常なキネマティクスとして、以下の状態がしばしば見られます。

  • 膝関節の伸展に伴う過度の下腿外旋
  • 膝の屈曲に伴う下腿内旋不足

このような膝の異常な回旋動態を「下腿外旋症候群」と名付けました。
下腿が外旋位であることによって、膝関節の疾患や機能異常につながり、それは膝疾患の治療を難しくします。
さらに、異常な回旋アライメントでの運動を反復することは膝内側へのストレスを増大させ、痛みや機能低下を引き起こす原因となります。

下腿外旋症候群の治療法

膝関節における「リアライン・コンセプト」の方針を下の図の通りとしています。変形性膝関節症(膝OA)のキネマティクス研究の結果をみると、これは典型的な下腿外旋症候群といえます。
変形性膝関節症(膝OA)のリアライメントとして、まずは下腿外旋拘縮を解消させて膝屈曲に伴う十分な下腿内旋運動を回復させることが必要となります。その結果、外方に偏位した脛骨を正常な位置に近づけることが可能となります。
変形性膝関節症(膝OA)であってもキネマティクスが正常化してくると、徐々に関節としての運動機能が改善されてきます。
他動伸展の痛みが消失したら、①リアライン(伸展制限の解消)、②スタビライズ(膝伸展筋力の回復)、③コーディネート(正常歩行の獲得)を進めていきます。

STEP1

リアライン

re-align

  • 回旋アライメント(スクリューホーム運動)正常化
  • 脛骨大腿関節(FT関節)の完全伸展位・完全屈曲位の獲得
  • 膝蓋大腿関節(PF関節)の膝蓋骨トラッキング・アライメントの正常化

STEP2

スタビライズ

stabilize

  • 回旋アライメント(スクリューホーム運動)のコントロールと安定化
  • 下肢筋群の連動(股関節、膝関節、足関節、足部)

STEP3

コーディネート

coordinate

  • 受傷機転となりやすい動作の再学習

変形性膝関節症治療の症例紹介

60代女性

現病歴

  • 変形性膝関節症(罹患期間5年)

治療プログラム

  • 下腿外旋拘縮を作っている膝周囲の軟部組織に対する組織間リリース
  • 下腿内旋位での膝伸展・屈曲運動「RRRプログラム」

経過

1回の治療によって、アライメント(膝内反)の改善、可動域の改善が得られた。

膝関節(膝の内側部)の痛み
膝関節(膝の内側部)の痛み

その後、3回に渡る治療により歩行時の痛みが消失した。

40代女性

スポーツ

  • バレーボール

現病歴

  • 過去に度々、左膝の疼痛を経験。
  • 特に膝を傷つけたりすることもなく、仕事や日常生活で左膝に痛みが出現。
  • 医療機関受診後に落ちついたものの、約1.5ヶ月後に再び疼痛が悪化。
  • 既往歴:左足関節捻挫

評価

  • 初回評価では、内側膝蓋支帯付近、膝蓋腱外側~脂肪体にかけて腫脹、熱感を認めた。疼痛(圧痛)部位は内側、外側膝蓋支帯であった。荷重、非荷重位とも屈曲、伸展強制で痛みがあり、歩行ではわずかに、階段下りで特に強い痛みを認めた。
  • 可動域は屈曲155/130°p、伸展3 p /5°であった。筋機能として随意収縮時の内側広筋の緊張は、右5/10、左4/10、MMTでハムストリングス4/4-、中殿筋4/4-、四頭筋筋出力の弱化が指摘された。また大腿四頭筋活動時には膝蓋骨周囲に疼痛を認めた。
  • 伸展筋力発揮時に、著明な下腿外旋位(Q-angle 30°/32°)、膝蓋骨外方傾斜のマルアライメントを認めた。スペシャルテストではLackman’s test(±)、McMurrays Test(-)であり、MRIにて内側・外側半月板に病変が認められた。その他に左足関節距骨後方滑り制限(+)とそれによる足関節背屈制限15/20°、股関節周囲のTightness(-)であった。

問題点

伸展・屈曲可動域制限、OKC膝伸展にて、最終域での下腿外旋が著名にみられるマルアライメントとした。

目標

下腿内旋の可動性、内旋位での安定性の改善により、内側へのストレス軽減、症状の消失を図る。

治療プログラム

大腿外側のリリースにより、外旋アライメントを修正しつつ、展可動域の向上を図った。脛骨の後方への可動性が不十分であったため、膝窩部の脛骨後方、すなわち膝内側のハムストリングス―腓腹筋間のリリースを丁寧に行い、下腿内旋エクササイズにて、内旋可動域の向上に努めた。

腰痛を引き起こす各部位の歪み

経過

  • 治療開始初日:非荷重位での疼痛消失(可動域回復)
  • 2週後:フルスクワット時の疼痛消失
  • 1か月後:バレー練習部分参加
  • 2か月後
    • Q-angle 32°⇒20°改善が認められ、可動域 屈曲、伸展fullとなった。
    • 筋機能:VMtone 4/10⇒6/10と徐々に回復が得られた。
    • しゃがみ込み動作によるの痛みの消失に加え、階段の下り動作では違和感程度となった。
腰痛を引き起こす各部位の歪み

考察

今回の症例は、階段の下り動作、しゃがみ込み動作で膝内側の痛みを生じる活動量の多い症例でした。膝蓋大腿関節(PF関節)と脛骨大腿関節(FT関節)の両方に問題を抱えていましたが、関節可動域(ROM)の改善、下腿外旋アライメントの改善により、スポーツ復帰が徐々に可能となりました。

膝関節の回旋アライメント評価と治療法をセミナーで学ぶ

膝の正常な回旋アライメントを取り戻すためには、運動療法だけでは難しく、組織間リリース(ISR)の技術が求められます。

クリニカルスポーツ理学療法(CSPT)の「膝関節編」は、膝関節の回旋アライメント評価とともに、それを確実に改善するための治療を習得できる内容となっております。
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